【あらすじ】
若くして妻を亡くしたカン・イノは、喘息持ちの一人娘・ソリを自身の母親に預け、美術教師として慈愛学園に赴任する。学園に向かう最中に立ち寄った自動車修理店で、人権センターで働くソ・ユジンでと偶然出会う。
着任して間もなく、校長とその双子の弟である行政室長から、教職に就いたことへの代償として5000万ウォンを要求されるイノ。学園の風習や雰囲気、生徒たちの様子に少しずつ違和感を感じていく。
ある日の放課後、イノは教師であるパクが寮を抜け出した罰として、男子生徒のチョン・ミンスに暴行しているのを目撃する。その場で制止したものの、彼の学園に対する疑問は更に深まっていくのだった。
また別の日、イノは女子生徒のチン・ユリに洗濯室まで誘導される。中の様子を伺うと女教師であるジャエに、女子生徒のキム・ヨンドゥが洗濯機の中に頭を押し付けられ、暴行を受けていた。あくまでしつけだと主張するジャエをイノは慌てて制止し、ヨンドゥを病院に連れて行く。生徒たちが学園で日常的に暴行を受けていると考えたイノは、人権センターのユジンに連絡をとる。
学園に戻り、事の経緯を校長に報告するイノ。彼らはジャエの過剰なしつけに対し素直に謝罪する。しかし病院に戻ったイノにユジンから語られたのは、学園の生徒たちが暴力だけでなく性的暴行を受けているという衝撃的な事実だった。
【レビュー】
終始重い雰囲気の作品なのだけど
生徒たちの優しくてあどけない笑顔に救われる。
側にいって大丈夫だよって言ってあげたくなる。
コンユの頼りない演技がハマっていてとてもよかった。
明らかにおかしい、間違ってると思う場面でも
自分の意思を主張することがなかなかできないイノン。
お金がないことや、娘の病気が彼の正義感を曇らせていく。
みている側としては、えー、イノンそこも受け入れちゃうの?って思ったりするけど
実際自分が同じ立場に立たされたら、多分何も言えない。
だから、彼の姿は頼りないけど、正直な嘘のない姿でもある。
そんな弱気な彼を変えたのは
自分たちの困難に真っ正面から向かっていく生徒たちの存在。
自分が忘れたくなるような辛い出来事について
人に打ち明けるのは勇気がいる。
大人だって相当な覚悟がいるんだから、まだ幼い彼らにとっては精神的にも負担が大きいだろう。
でも彼らは逃げることなく、事実に向き合いしっかりと証言する。
そんな彼らの姿によって最初は頼りなかったイノンも、
教師として、父親として徐々に強くなっていく。
大事なのは名誉でも、お金でもない。
自分を必要としている生徒たちのために
精一杯誠意を尽くすこと。
だからこそ、救えなかったミンスに対しては後悔が残る。
大人たちの勝手な欲望によって、彼はいろんなものを失ってしまった。
誰かがもっと早く彼を助けてあげていれば。
作品終盤、事件の後、何が一番変わった?というユジンの質問に対して
「私たちも他の人と同じように、大事な存在であることがわかった」
と答えた生徒たち。
分かりやすくて重い、心に響く言葉。
この事件がすごく昔のことではなく、ほんの何十年か前の出来事だということにびっくりするし、映画の公開によって事件が再度検証され、加害者の刑罰が見直されたことにも驚いた。
作品を制作するのはとんでもなく大変な作業だったと思うけど
いろんな人がこの作品によって救われた気がする。
俳優にとって、優秀な監督の作品に出ることや、知名度の高い作品に出ることはすごく重要なことだと思うけど
実際に世界を動かして誰かの心を救ってあげることほど、重要なことってあんまりない気がする。
例えそこで批判を受けても、それ以上に感銘を受けてくれる人がいるなら、それだけでいいと思うから。
社会的な課題から作品のヒントを得て、批判を受けたり苦労しながら作品を制作、公開することで多くの人に影響を与え、世の中を動かしていく。
わたしはこの図式がすき。
世の中を変える方法って色々あると思うんだけど
映画の与える影響って、衝撃的なのに情緒があって、何となく上品な気がする。
日本でもこういう作品増えてほしいなあ。
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