パラサイト 半地下の家族
わたしは大学生の時
少し暴力的なシーンもあるので、若干うっと思ったのですが
【ストーリー】
半地下で生活するキム家は父ギテク、母チュンスク、息子ギウ、娘ギジョンの4人家族。
ギウは友人であるミニョクの紹介により、パク家の娘、ダへの家庭教師として働くことになる。
パク夫人が息子ダソンの絵の家庭教師を探していると知ったギウは
妹であるギジョンを有名な絵画教師としてパク夫人に紹介する。
更に運転手、家政婦を陥れ、彼らから職を奪ったキム家は、4人全員がパク家内で就職することに成功する。
パク家がキャンプに出かけたある日、キム家族がパク家で宴会を開いていると
解雇されたはずの家政婦ムングファが突然訪ねてきた。
忘れ物をしたという彼女。
地下のパントリーへと降りて行ったムングファがなかなか戻らないことを
不審に思ったチュンスクが様子を見に行った時
この家に隠されていた衝撃の事実が発覚する。
【感想 ネタバレあり】
まず第一に経歴を詐称したり、騙すことに対するハードル低すぎて
見ているこっちがヒヤヒヤする。
どこまで嘘つくねーんていう。
でもこれ韓国映画だとあるあるなのかも。
貧乏だけどキム家の4人は仲良しで、常に前向きなのがいいなあ。
そして少しでもチャンスがあれば絶対逃さない!という貪欲さも好き。
一方のパク家も一人ひとりは優しくて性格もいい。
唯一、家長であるパクだけが身分の違いを敏感に感じ取ってる。
「出すぎる」人が苦手なパクにとって
程よく察してくれるギテクは運転手として完璧。
だけど、匂いが。。
この匂いっていうキーワードがものすごく重要。
いつもニコニコしてるギテクだけど、この匂いの話になると
瞬時にシリアスな表情になる。
能天気で前向きに生きてるように見えて
本当は半地下生活で染み付いてしまった自身の習性を、どこか後ろめたく思ってるんだろうなあ。
パクとギテクの対立が顕著に描かれているのが
ダソンの誕生日パーティーの最中、二人で仮装して出番待ちするシーン。
「奥様はサプライズがお好きなんですか?ご主人も大変ですね」ってギテクが言うと
パクが顔色変えて
「今日は勤務日でしょ?これも仕事としてやってください」って言うんですよね。
それ以前にも2人の会話で、ギテクがパクに
「それでも奥様を愛してるでしょ?」って聞くシーンがあったと思うけど
あの時のパクの表情が絶妙に複雑だった。
何を表してたんだろう。
いわゆる「出過ぎた」質問だったのかもしれないなあ。
表面上はうまくいっていた2人だけど
こういう小さい溝がどんどん深くなっていて最後のシーンに繋がる。
パーティーの最中にギジョンがグンセに刺されてしまい
ショックでダソンも気絶してしまう。
パクはギテクにダソンを病院に運ぶよう命令するんだけど
娘であるギジョンをどうしても見捨てることができないギテク。
逃げ惑う人混みの中には、頭から出血した状態でダヘにおぶわれているギウの姿もあった。
しかもその間、グンセは妻であるチュンスクまで襲おうとしていた。
チュンスクは身を守り、逆にグンセを殺害。
慌ててギジョンのもとに駆け寄る。
このシーン、じんとしてしまった。
やっぱり娘が一番だよね。
こんな状況になれば、誰よりも自分の子供が一番大事。
でもそれはパク家にとってもそうで。
ただの気絶と分かっていても、ダソンを一刻も早く病院に運びたい。
なかなか動き出さないギテクに痺れを切らしたパクは
自分が運転するから車のキーを渡せ、と命令。
言われた通りキーを投げるも、それは瀕死の状態で倒れていたグンセの近くに落ちてしまう。
グンセを転がしながらキーを探すパク。
ずっと地下で生活していたグンセは体臭がひどく
思わずパクは鼻を塞いでしまう。
このパクの表情がギテクにとって最も屈辱的だったんだよなあ。
パクが自分の匂いも嫌っていることを知ってたから。
地下鉄のような香りがする、「主張しすぎる」て。
ギテクはグンセに自分の姿を重ねていたのかも。
グンセのことも、自分のことも、パクは身分の低いものとして軽視してる。
これまで気にしないようにしていた、染み付いている地下生活の習性を
露骨に否定された気がしたんだろうなあ。
それに加え自分の娘が瀕死の状態にあるのに、他人の子供を病院に運べと命令してくる。
パクの言動何もかもが攻撃的な侮辱に感じたギテクは
その場でパクを殺害してしまう。
この展開はまさに予想外だったなあ。
でも疑問には思わなかった。
多分ソン・ガンホによってギテクの感情がうまーく表現されていたから。
表情であれだけ表現できるってすごいなあ。
個人的には「追憶」のラストシーンの彼の表情が物凄い迫力で
最後に見たのは10年以上前なのにいまだに忘れられない。
最後にギテクが地下に戻るのはなるほどなあ〜!と言う感じ。
この発想は最高。
それをギウにモールス信号で知らせるのも最高。
ギウが将来この家を買い取ることができるかはわからないけど
そうなって欲しいなあ、っていう
ちょっとほっこりした感じで終わるのもすごくよかった。
出演者で言うとグンセ役の パク・ミョンフンも凄かった。
なんと言うか、恐ろしすぎて少しも感情移入できないんだけど
この作品には絶対必要な人物。
地下に隠れて、生活全般をムスタファに頼り切ってきた彼にとって
妻を奪われたことは一番悲しかったんだろうな。
でもさ、もうちょっとやりようあるよね?笑
いろいろリスキーな気がするし、身勝手な気もするけど。。
彼が送ってたモールス信号は結局誰にも届いてなかったのかな。
ダソンはモールス信号の存在には気づいたけど、
グンセの姿がトラウマになってしまっただけだし。。
ギジョン役のパク・ソダムもとってもよかった。
彼女は一つ飛び抜けている感じ。
何もかもが様になると言うか。。
どんな役もこなしてしまいそう。
多分見てる側が「この人すごい!」って自然と感じ取ってしまうくらい
オーラがすごく強い気がする。今後もいろんな作品に出て欲しい。
長々書いてしまったけど、やはりポン・ジュノはすごい。
過去の作品もう一度見直そうかな。
そしてオスカーでのスピーチもまた素敵だったなあ。
マーティン・スコセッシを称えて全員がスタンディングオベーションするシーン
思わず泣いてしまった。
本当に素敵。
映画でも、実際の生活でも
「素敵なシーン」にたくさん出会って行きたいなあと思います。
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